建築における《行けない場所》について

「建築とは、明快に規定された媒介空間(ポシェ)を形成することだと考えられる。」アルド・ファン・アイク

 

では〈ポシェ〉とは、なにか

 

「ボザールの基礎用語のひとつ。平面や断面において、空間を「地」と考えたとき「図」に当たる部分、すなわち壁、柱、梁、及びそれに準ずる空間を指して言う。」

とロバート・ヴェンチューリ著の建築の多様性と対立性にはある。

 

図と地の考え方はゲシュタルト心理学の重要概念で、簡単に言えば何かを知覚した時に際立つものが図であり、背景として後退するものを地と呼ぶ。

たしかに図面上の解釈だとこうだ。

 

「いわば、ポシェとはa、b、c、dという内側や外側、様々に知覚された形相と形相が頭の中に重ね合わされた時、どうしても一致しない剰余として現れる部分のことです。これは、それこそ思弁的に導き出されるものですが、それは直接知覚される実態以上に質量そのもの、物質そのもののように現れるということですね。言い換えればポシェがそこに出現しなければ、a、b、c、dという矛盾はもともと別の空間に属するものとして異なる複数の空間に振り分けられるだけですが、ポシェが露呈し、知覚された途端a、b、c、dの知覚される形式を超える、実体としてメタ形式があったことが把握されうる。」岡崎乾二郎

 

岡崎乾二郎さんはいつもいいことを言う。非常にわかりやすい。現象としてはポシェは「地」となり、空間が「図」となる。

ポシェと空間の関係は図面上と実体験の間で反転関係にあるということだ。

 

ポシェを語弊を恐れずにもっともっと噛み砕いて言えば、建築における《行けない場所》だ。

柱の中、壁の中、天井裏、床下、配管スペース、etc……

これらは建築そのものであり、かつ同時に建築ではない。そしてこれらは専ら建築の外周面と内周面の狭間に存在する。

具体的な体験に即して言えば、例えば、ビルトインのエアコンが設置されている場合、それは天井裏、または壁の中にエアコンの筐体が隠されていることが多い。そこに想いを馳せてみるということだ。目に見えている配管のいく先に、屋根が三角なのに天井がドームになっている理由について、思うことである。そこには経済的な理由、環境要因、そして建築家の意図が宿る。非常に面白いと思っている。